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マグリット展に行ってきた感想

マグリット展の入口看板写真

すっかり日にちが経ってしまいましたが、先月(5月22日)に国立新美術館で開催中の「マグリット展」に行ってきました。

マグリットといえばシュルレアリズムの巨匠として知られていますね。
空と鳥のモチーフや山高帽をかぶった紳士の絵などが印象的ですが、騙し絵のような、不思議な空間に引き込まれるような魅力を感じます。

今回は約130点の作品が展示されるそうで、マグリットの本格的な回顧展は13年ぶりということもあり、せっかくの機会なので出かけることにしました。

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まずは、チケットを購入する

ちょうど国立新美術館では「ルーブル美術館展」が6月1日まで開催されていて、その影響もあってか平日の日中にも関わらず予想より人出は多かったです。

国立新美術館の入口の画像

私が到着したのは14時頃。
チケット売り場には30人くらいの列ができていました。
窓口は確か3つだったと思います。「マグリット展」も「ルーブル美術館展」も同じ列でしたが、進みはスムーズで思ったよりも速くチケットを購入することができました。

館内に入ると1Fのカフェもほぼ満席の様子。ざっと見渡した感じ、ご年配の方が結構いらっしゃるなぁという印象です。

いよいよ入場!音声ガイドをレンタルする

「マグリット展」が開催されている2階の企画展示室に到着。
入り口は《ある聖人の回想》をモチーフにしていました!

今回は音声ガイド(550円)をレンタルしました。
展覧会で音声ガイドを借りるのは初めてでしたが、ガイド役が俳優の石丸幹二さんということで良い声に期待(*′艸`)

借りる際にスタッフの方が操作方法などを説明してくれます。まぁ操作方法といっても見れば直感で分かる程度には簡単です。

初めて聴く音声ガイドは思ったよりも楽しいものでした。BGMが挿入されたり、ナレーションも石丸幹二さんが「謎の山高帽の男」になりきって、ユーモアを交えて興味を引く語り口。さすがに良くできてるなぁと関心しました。

マグリットの作品に対しての理解も深まったので、今回、音声ガイドを借りたのは正解でした。
もちろん解説なしで自分の観たまま感性で楽しむというのもアリですが、音声ガイドを聴きながらの鑑賞もおススメです。

マグッリット展入口の画像

見応えたっぷり約130点のボリューム

展示室の中はちょうど良いくらいの混み具合で、作品の前に10人程度の人が留まっている所もありますが、1枚1枚じっくり観覧できる環境でした。ただし、展示作品が多いのでのんびり回るととても時間がかかりそうです。

今回のマグリット展は、第1章から第5章まで年代ごとに構成されていました。

第1章の初期作品は、生活のために請けていた商業デザインの仕事も展示されていて、婦人服店の広告や楽譜の装丁などがありました。単純化された女性のイラストなどは現代の広告にも影響を残しているようです。

第2章ではキリコ《愛の歌》に感銘を受けたマグリットはシュルレアリズムに傾倒していきます。布を顔に巻いた男女が口づけしている《恋人たち》が印象的でしたが、マグリットが愛読していた探偵小説の中に布で覆われた遺体の表現があり、それに影響されたものらしいです。

図録の解説には布越しの口づけは、見るものに触覚的な不快感を覚えさせるものだと書かれていますが、不安や不快といったもののほかに倒錯的なエロスも感じます。

マグリット《恋人たち》の画像

マグリット展公式図録 P.99より《恋人たち》

マグリットの母親は、彼が14歳の頃に母親が入水自殺をしていて、発見されたとき母親の遺体の顔はナイトガウンで覆われていたそうです。マグリット自身は母親のその事件について語ることはなかったようですが、あるいはそういったことが深層心理にあり作品に影響していたのかもしれません。

第3章は、マグリット独自の芸術が完成し世界的に名を知られるようになった時代です。それでもまだ絵画だけで生活していくのは難しく、商業美術の作品も手がけていました。

マグリットは肖像画はあまり描かなかったようですが、それでも依頼されたものも含め50点ほどは描いていたそうです。しかし、普通の肖像画とは少々趣が違って、とてもマグリット的な世界観の中に描かれているのが面白いです。

マグリット《ジロン家の肖像》画像

マグリット展公式図録 P.128より《ジロン家の肖像》

第4章では、戦時や戦後の時代背景によって作風が変わっていく様子が窺い知れます。「ルノワールの時代」と呼ばれた、柔らかな色彩とタッチの作品群、「ヴァーシュ(雌牛)の時代」と呼ばれたけばけばしい色彩と荒々しいタッチの作品群。この極端な作風の変化は当時かなり不評だったようです。

第5章。やはり圧巻なのは晩年の作品ですね。この時代マグリットは50代を迎え、1930年代(第3章の頃)に確立した独自の様式に回帰していきます。マグリットの作品としてポピュラーなものはこの時代に描かれたものが多いのではないでしょうか。

マグリット《光の帝国2》の画像

マグリット展公式図録P.180~181より《光の帝国2》

《光の帝国2》は好きな作品の一つです。この作品を知ったのはもうずいぶん前ですが、当時好きだったジャクソン・ブラウンの「レイト・フォー・ザ・スカイ」というアルバムジャケットのモチーフになっていたからでした。空は昼で風景は夜という相反するイメージは神秘的な雰囲気を感じます。このイメージは評判がよかったらしく複数のバージョンが存在します。今回の展示作品は《光の帝国》シリーズの2作目ということです。

山高帽の紳士が何人も空中に浮かんでいる《ゴルコンダ》。山高帽の紳士は「普通の人」の象徴であり、マグリットの自画像とも言われています。《ゴルコンダ》というのは南インドにあった都市で、ダイヤモンドの産地として富と豪奢で知られる夢の都なのだそうです。

人が空を飛ぶこと、つまりそれは幻の都に例えられるほどの脅威であり喜びであり、夢物語なのだということなのでしょうか。

マグリット《ゴルコンダ》の画像

マグリット展公式図録P.206-207より《ゴルコンダ》

「マグリット展」の看板にも使われている《白紙委任状》も面白いですよね。馬に乗って森の中を進む女性ですが、よく見ると何かがおかしい。
白紙委任状とは、絵の中の彼女にやりたいようにやることを認めるものだそうです。見えるところも見えないところも彼女の好きにしていい。その結果、見えるべきところが見えず、見えないはずのところが見えているという面白い世界です。
マグリットは見えるものと見えないもの(隠されているもの)の関係性にも関心があったようです。

マグリットは同じモチーフで何枚も作品を描いているので、似たような作品が多いのですね。鳥をモチーフにした《空の鳥》と《大家族》。空中に浮かぶ岩を描いた《ピレネーの城》と《現実の感覚》など。

《ピレネーの城》はマグリットの友人の弁護士の依頼で描いたものだそうです。このとき依頼人は故郷の北海のように荒れた海の上に、光の帝国のような明るい昼間の空に浮かぶ、堅固な城をいただいた岩というオーダーをしました。その他にも依頼人の希望はあったようですが、それらはマグリットの好むところではなく、完成したのがこの作品なのだそうです。

この、荒れた海、晴れた空、堅固な岩に石造りの城というモチーフからは、力強さや希望を感じます。個人的には《現実の感覚》よりも《ピレネーの城》のほうが好きです。

東京展では残念ながら展示はありませんが、は7月11日からの京都展では展示されるそうですので、図録にも掲載されています。

マグリット《ピレネーの城》《現実の感覚》の画像

マグリット展公式図録より 左はP.199より《ピレネーの城》、右はP.201より《現実の感覚》

観覧は時間に余裕をもって行くのがオススメ

見応えたっぷりの「マグリット展」。
私はだいたい1時間ちょっとで全部まわりました。始めはじっくり1点1点観てたのですが、途中で時間が足りないかも?と思って早足で回ったところもあります。

休憩室でマグリット家のホームビデオ(?)が放映されていたようですがそれは観ていません。
作品もじっくり観て、ビデオも観てとなると、2時間くらい時間をみたほうが良いかもしれませんね。

観覧のあと図録とグッズを購入したのですが、長くなったので次の記事に持ち越します。

前回のエントリー「マグリット展に行ってきた感想」の続きです。 マグリットの作風はグッズにするにはもってこいですよね。 デザイン性も高...

マグリット展

会期
2015年3月25日(水)~6月29日(月)
毎週火曜日休館 ただし、5月5日(火)、5月26日(火)は開館
開館時間
10:00~18:00 金曜日は20:00まで
4月25日(土)は22:00まで
5月23日(土)、24日(日)、30日(土)、31日(日)は20:00まで
入場は閉館の30分前まで
会場
国立新美術館 企画展示室2E
〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2
公式サイト
マグリット展(サイト削除)
国立新美術館

参考文献:「マグリット展公式図録」読売新聞東京本社 発行

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